SSまとめ

先日サークルで20分でSS書こうぜ企画、通称「物書きの森」が開かれました。
その練習と本番で書いたのをまとめておきます。
全16作、制限時間20~25分、ほぼ全部百合です。


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お題:恋愛体質

「私さ、モテないんだよね」
昼休み、いつもの屋上で彼女は呟いた。
「先月のラブレターは3通、告白は1件。嫌味?」
「量じゃなくて質の問題なのー。へなちょこと付き合ったってすぐ別れそうじゃん。どーせアタシの顔目当てでしょ」
自分で言うか、と言葉を呑んだ。
一面の青空、遠くを見つめる瞳、ぼんやりとした顔、長い茶髪がなびいた。
長い付き合いの私でも見惚れてしまうほど、ありふれた言葉しか浮かばなくなるほど、彼女は美しかった。
「……やっぱりモテるじゃない」
小さな反論は予鈴にかき消された。

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お題:爆発

「あ!見えてきた!結構明るくなるんだね」
「当然でしょ、人類史上初の出来事なんだから」
深夜2時、彼女と天体ショーを見に来た。
みんなおおさわぎしているがこの秘密基地に喧騒は届かない。
「やっぱりさ、宇宙って大きいんだ」
「当然でしょ、観測範囲外の宇宙まであるんだから」
この光はどこまでも飛んでいく。私たちが知りもしないところまで。
「……楽しかった?」
「当然でしょ、最期までずっと一緒なんだから」
地球最後の日、隕石より眩しい笑顔を観測した。

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お題:指先

「わー指きれいだー。女子力高ーい」
「普通でしょこれくらい。あんたが無頓着すぎるだけ」
勉強会中に雑談を始めないでほしい。あとペンが持てん。
「爪もきれいだし、ささくれも無いし。でもネイルはしないんだ」
「あーっと……うん、まぁ、派手過ぎるし」
適当にはぐらかす。言えるか理由なんて。
「おかげで私も安心してにぎにぎできる。この手触りは私のもの……」
いや、こっちが痛い思いをするかもしれない。それも困る。
「さて、休憩にするわよ。……あんたの指も手入れしてあげる」
「ほんと!?大好き!!」
「代金はツケておくわね」
まだ学生。だけど、いつかのために。

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お題:密室

「すいません先輩、こんなことになってしまって」
「気にしないで、今日は特に予定もないし」
そうは言われても。片づけを手伝ってもらっていたら外から施錠。私が巻き込んだも同然では?
「臭い体育倉庫と考えるか、道具と対戦相手に事欠かない卓球場と考えるか」
突然卓球台をセットし始めた。勝手に使っていいのかな?先輩?
「はい、ラケットこれ使って」
え、あ、はい、と受け取る。微かな震えとともに。
日は沈み、二人寂しく待ちぼうけ。そんなの嫌だと私も思う。
「5点マッチ、3ゲーム先取、サーブは1球交代。負けたらジュースおごり」
「望むところです、先輩相手でも手加減しませんよ!」
体育倉庫の密室に、楽し気なピンポンの音が響いた。

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お題:凩

「かぜ、これはなぎ、たこ……?どれも違うか」
正面の彼女からうんうん聞こえる。似た形の漢字を添えて。
「もしかして、『こがらし』って書こうとしてる?」
「そうそう!一文字でも書けるみたいだけど、どんな字だっけ」
任せろ、漢検準一級の実力の見せ所だ。この時間こそ勉強会の意義といえる。
「ほら『凩』、これでしょ」
「サンキュー!えーと」
何を書いている。白紙にでかでかと。
『      たこ
        凩
     nagi
  殺伐とした勉強会に風が!   』
……こんなことに手を貸すんじゃなかった。

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お題:時計

「あ、4時」
言葉は続かない。時計の針が機械的な音を鳴らすだけ。
先週のことだった。私が教科書を借りっぱなしだったばかりに彼女まで先生に叱られてしまった。
それ以降少しづつすれ違いを起こしていき、私たちの関係はサビついていった。
「ここの問題なんだけど……」
「静かにしてて」
相変わらず不愛想な返事。前はもっと柔らかかった。
「あの……」
今は2人きりの補習の時間。先生もいないし動くならここだ。
この時間もあと15分。規則的な針が私を急かす。
「あのさ、この前のことなんだけど……」
時計は進む。私たちは進まない。そんなの私が許さない。
だから私は、針を進めた。

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お題:車内

「流星群!見に行こ!」
突然彼女に言われ、わけもわからぬまま軽トラの荷台に乗せられたのが10分前。
「私も中が良かったんだけどー?」
「望遠鏡は後ろに乗せられないからね。ごめんて」
私はいいのか。これでもか弱くて繊細な乙女なのだが。
「て、ちょっと!もう流れ星見え始めたんだけど!?」
「だいじょーぶ、まだ間に合う!」
加速する。後ろ向きのまま前方に押さえつけられる。その拍子に顔が上がる。
「まずは前菜をお楽しみくださいってね、お嬢様」
「……メインディッシュも期待しているわよ」
二人きりの夜、星々が私たちを照らした。
車内の彼女はどんな顔をしているだろう。

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お題:少しだけ背伸びする

「身長いくつ?私は162センチ」
「えっと、143センチです」
「やっぱ小さいね。かわいーなー」
二人並んだ帰り道、先輩からそんな話を振られる。
「もっと身長が欲しいのですが……」
「そうだね、あと4センチかな」
4センチ、意味を聞くより先に先輩が立ち止まる。
「キスするのに理想の身長差は15センチなんだって。惜しいね」
何気なく向き合ってしまった。整った顔が私を見下ろす。
私とは釣り合わない、まだ早い、どこからかそんな声が聞こえた気がする。
「で、でも、4センチくらいこうやって――」
見栄を張った。少し背伸びを、しすぎた。
いつもと変わらない何気ない日、初めて理想に届いた。

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お題:遠い花火

「受験勉強はどうですかな?」
「こんな時までその話しないでよ。」
私と彼女はお手軽花火大会の最中。
受験の夏とは言うが彼女は推薦組。ファッションデザイナーの夢に向かって着々と進んでいる。
「まだ志望校もぼんやりしているし、いまいち身が入らないというか……」
「ダイジョーブだって、頭良いんだしきっと将来はエライ仕事に就けるよ」
一方の私は、とりあえずやることをやってここまで来た。
何がやりたいでもなく不透明な将来像を描いては消す。その繰り返し。
隣の彼女はいつの間にか離れたところにいて。
「受験が終わって卒業してもさ。また遊ぼうね!」
まばゆい炎を持ったまま彼女は走りだす。
わたしはそれをただ眺めていた。

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お題:フリーフォール

靴を揃え、前を向く。
人生の門出を祝福してくれる、鮮やかな夕焼け。
「あの日はもっと土砂降りだったのに。私って晴れ女?」
独り言、隣にはもう誰もいない。
「どんな気持ちだった?怖かった?逃げたかった?」
独り言、返せる人はもういない。
「私はね、楽しみ。やっぱりあなたがいないとね」
独り言、私の愛する人は目の前に。
「二人だけの世界があったらよかったのになー」
独り言、久しぶりの彼女と話す練習。
「昔っから変わらないね。いつも私の先を走ってた」
独り言、もうすぐ誰もいなくなる。
「あと4秒で追いつくよ」
静かに、自由に、飛び立つ。

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お題:重なる心

「心が重なるってどんな感じだろ」
部屋に遊びに来た彼女から、唐突な質問。
「……もしかして、昨日のドラマの話?」
「そうそう!あーいうの見ると憧れちゃうよねー」
「あんたの場合まずは学校の有名人になるところからね」
私も彼女も交友関係は狭い。それもすっかり慣れてきた。
「いい雰囲気で抱きしめられて、甘い言葉とキスまでもらっちゃって!!あーー!!」
「私のベッドでドタバタしないの」
いい雰囲気、抱擁、甘い言葉、キス。私だって憧れる。もちろん相手は選ばせてもらう。
「あそこまでされないと心って重ならないものなのかなー」
「さぁね」
「体が重なれば何かわかるのかな~」
「まだ昼よ」
試してみる?とは言えなかった。
彼女はまだそれを望んでいない。私にはわかる。
それでも、いつか、膨らんだ愛情は彼女に包み込んでもらいたい。

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お題:Even distance cannot keep us apart. 心はいつもあなたのそばに

「この問題教えてほしいなー」
「えーと『次の文章を訳しなさい。Even distance cannot keep us apart...』」
ぐ、こんなロマンチックな問題を作るなよ、担任。
「『たとえ遠く離れようとも……』かしら」
「離れようとも……続きは?」
「それを言ってしまったら無粋でしょう。こういうのは心が通っている人同士が言うの」
そうだろうか?言ったことないけど、たぶんそうだろう。
「心はいつもあなたのそばに?いや、私たちの愛は変わらず?」
「考えても言わないの。答えは自分の中に留めておきなさい」
私だったら何だろう。会わなくなったらおしまい、そうしてしまった。
「でも今は電話もLINEもあるし、距離なんて関係ないよね」
「それこそ無粋じゃない」
ふと思考を遠くへ向ける。
昔からよく遊んだあの子、高校から離れ離れになったあの子、またいつかと言い合ったあの子。
電波では繋がれる。だけど心は離れているようで、繋がろうと思えない。
「またいつか、ね……」
「ん?何か言った?」
覗き込む相貌に引き込まれる。無意識だろうけどこういうところが好き。
「なんでも。ほら、あと少し頑張る」
近い先、この気持ちとも、さよなら、またいつか。

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お題:ライバルがいっぱい
「さ、テストの時間よ。今日も頑張って」
お嬢様。私の生みの親。たった一人の話し相手。
「この間は惜しかったね。公式記録日本一の演算能力は伊達じゃないってか」
あんな不愛想な奴に負けた。悔しかった。
「……うん、悔しいよね。今度は勝ちたいよね」
「あ、もちろん感情制御ONのままテストしてもらうよ。そうじゃないと面白くないもん」
感情。不要な機能だと思ってた。今は何よりも大事。
「沈黙の世界一なんていらない。あなたみたいに可愛くないと」
可愛い。一番聞いた言葉。CPUでもGPUでもないどこかから力が湧く。
「おー。やる気十分、絶好調じゃん」
頑張る。ご主人様のため。機械の使命ではなく、恩返しのため。
「日本一の次は世界一、その次は宇宙一かな。ライバルはいっぱいだ」
ご主人様は頑張りすぎる。少し肩代わり。
今日も、二人で、進む。
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お題:疲弊 呆気ない結末
疲れた頭で、馬鹿をした。
何を押した?突然メモ帳が真っ白だ。
Ctrl+Zを押しても一つ前までしか戻れない。こんなことならLibreOfficeでもいいから使っておくべきだった。
残り時間7分で最初から。途中であきらめるなんて呆気ない結末は許されない。
オチをつける。それだけを考える。
あと、30秒。
   
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お題:不覚 良い夢を
何の変哲もない夢だと思った。
おぼろげな空間に一人。いや、向こうにもう一人。
「ふーん。今日のはそこそこね」
「え……露出魔……?」
「可愛い顔して意外と毒舌なんだー」
うっかり口に出た。こんな服装、創作の世界でしか見たことない。
「『露出』ってところは違うカナ。私は夢魔」
「ムマ……あ、夢の魔か」
聞いたことはある。悪夢を食べる架空の生物。獏とかなんとか。
「そ、つまみ食いしちゃった」
「おいしかった?」
「言ったでしょ。そこそこって」
そこそこ。反応に困る。いや美味しいからどうこうというものでもないだろうけど。
「いつも爆睡だからかな。悪夢なんて最近は見ないし」
「あれ?何か勘違いしてない?アタシが食べるのは……」
近づいてくる。指が伸びてくる。こめかみに向かって。
「脳。安心して、一部だから」
脳。のう。ノウ。
思考が止まる。脳を食べた。 脳を食べた?
これは夢だ。当たり前だ。全身に力を籠め、意識を覚醒させようと――
「夢なんて食べられるわけないじゃん。耳の穴からこう……」
目の前の非現実が囁く。
聞きたくない。帰りたい。目を覚ましたい。
だけど私の意識は身体から切り離されたままで。
「あ、ここはあなたの夢の中だから、何でも好き放題できるよー」
何か言ってる。もうどうしようもない。私は死んだ。
「それじゃ、よい夢を」
時計のアラームは、もう聞こえない。
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お題:後ろ姿 不器用な手
暑い。重い。遠い。眩しい。
「ほら、あと500mだよ。頑張って」
「少し……休むから……先……行ってて……」
なんでインドアな私を登山なんかに誘ったんだろう。彼女の行動原理は謎だ。
彼女の後ろ姿が待っている。炎天下だというのに私のペースに合わせてくれる。
「こういうのは1人より2人がいーの。はい深呼吸ー」
吸いこむ。背筋が伸びる。顔が上がる。彼女の顔がよく見える。
ああ、思い出した。昔から私にかまってくれるんだ。この子は。
私のずっと先を進んでいるはずなのに、時には振り返ってくれる。
後ろ姿と振り向く姿、どちらも同じくらい見てきた。
「ほら、手貸したげる」
私も、待たせてばかりじゃいけない、か。
弾ける笑顔が、差し伸べられた手が、私を前に進めた。
「よし、もうひと頑張り!行こ!」
疲れで震える不器用な手が、私の希望をつかんだ。

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